『酢を加熱、味に広がり』
酸っぱいものが大好きなわが家。食卓には必ずサラダや酢の物などが並びます。酢がのどを通っておなかに入ると、体がなぜかしゃんとします。夏の暑い盛りは、毎日のように酸味の効いた梅やシソのジュースを飲み、なんとかしのぎました。夏の疲れが出る今ごろは、酢を使ったおかずやごはんを食べると、ばて気味だった体に活が入って、食欲も増すように感じます。
酢は、煮物やいため物の仕上げに使うと、ただ酸っぱいだけの味ではなくなります。熱を加えることで酸味がやさしくなるのです。例えばしょうが焼きや照り焼きのような甘辛い味付けの料理に、ほんの少し酢を使うと、濃厚な味なのに後味さっぱり。南蛮漬けのような揚げものに酢を合わせる料理は、冷めてもおいしく、酢がなじんで油くささがなくなります。
逆に酢をしっかり効かせると、よりおいしくなるものもあります。ちょっと濃いめに味付けした野菜いためにさっと酢をまわしかけると、塩やしょうゆの味がやわらぎます。焼き肉などもレモン汁や酢を付けて食べると、肉の脂を酸味が包み込んでくれるので、しつこくなりません。辛い味にも酢はよく合う。ただこちらは、辛味が抑えられるというより、辛味と酸味がどちらも負けずに口の中で暴れる感じ。こういう味は癖になりますね。
3歳になる娘も酸っぱいものが大好物。離乳食のころから食べているからでしょうか。大人が食べるような酢のしっかりと効いたピクルスもぼりぼりとかじりますし、食欲がない時ごはんを酢飯にすると喜んで食べてくれます。
酢をいっぱい食べると体がやわらかくなる、というのは迷信でしょうが、肉や魚の料理をやわらかく仕上げてくれるのは間違いありません。酢を加えて鶏や豚を煮ると、ほろほろと崩れるほどに。骨付きの鶏肉なら、骨離れがよくなり、小魚は骨までも食べやすくなります。
今回はそんな酢のいいところをいっぱいに詰めこんだレシピです。酢は玄米やもち米を原料にした長期熟成させた黒酢を使いました。こくと香りがあり、熱を加えることで甘味が出ます。メーカーによって味わいが違うので、味見を繰り返して好みの味に仕上げてください。あんがつやつやと黒く光って、美しいひと皿です。
(提供:信濃毎日新聞)




















