上田市真田町傍陽の会社員佐藤一男さん(55)が23日、一人芝居「Kの悲劇-ある戦争体験者の証言より」を地元の萩集落センターで上演する。第2次大戦で中国に出征した同市殿城、神林益夫さん(86)が、上官の命令で人を殺さざるを得ず、今も夢に見てうなされる体験を基にしたオリジナル。戦後世代の佐藤さんが若いころ打ち込んだ芝居という手段で、戦争の怖ろしさを伝える。
佐藤さんは山形県出身。地元の高校を卒業後、千葉県の会社に勤めていたころに芝居に出合った。東京の劇団を渡り歩き、自ら劇団を設立したことも。20代は芝居に明け暮れた。40歳近くになって知人の勧めで須坂市のペンションに住み込み、その後、上田市の会社に就職した。
芝居は約25年ぶり。軍服の衣装を着て、終戦後に上田に戻り、戦地での出来事を振り返る神林さんを演じる。
神林さんは戦中、中国東北部の前線部隊に所属。ある日、野営地に3人の若い女性が迷い込み、部隊では「朝鮮人の従軍慰安婦」とささやかれた。やがて情報漏れを恐れた上官たちから、3人を殺すよう命令された神林さんは、1カ所に固まって震える女性たちに手りゅう弾を投げた。
神林さんは、その時の女性たちの「言うに言われぬ表情」を今も夢に見る。「語るのは自分の義務」と考え、3年前、「9条の会・真田」の発足式で講演。イラク戦争やイラクへの自衛隊派遣、憲法改正論議といった動きに危機感を募らせ、同会設立にかかわって事務局長に就いた佐藤さんは、神林さんの話から、すべての人の心に傷を残す「戦争の本質」を知らされた思いがした。
「(戦争関係の)『本を読んでみろ』と言われるより、『芝居があるから見てみないか』の方が、垣根が低くなるんじゃないか」と佐藤さん。「自分は本当にやりたい芝居をやったのか」との思いも強く、再び芝居に挑むと決めて神林さんの元に通い始めた。
今回の上演は十数分。神林さんはほかに、上官の命令で中国人の子どもを車でひき殺したことや、戦後の旧ソ連での抑留体験も語っており、佐藤さんはいずれ、そうした体験すべてを演じたいと考えている。神林さんは「戦争を知らない世代が、自分の体験を受け継ごうとしてくれるのはうれしい」と話す。
一人芝居は「9条の会・真田」主催の「平和を考える連続セミナー」で、メーンの映画「パッチギ! LOVE&PEACE」の上映会の前に午後7時から上演する。問い合わせは佐藤さん(電話0268・75・3359)へ。
(提供:信濃毎日新聞)





















