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entertainment食べちゃうほどに近しい2人 「ベーコン」 井上荒野著

(2007年11月26日)
「ベーコン」 かわゆい表紙に、チクリと痛い物語

「ベーコン」 かわゆい表紙に、チクリと痛い物語

 帯に「食と性愛にまつわる9つの物語」とある。おいしそうな料理名をタイトルにした9つの話から成る短編集だ。

 毎週末、家にやってくる不倫相手の妻に子供が生まれてぼうぜんとする女が、亡き母の得意料理を作る「ほうとう」。30年つきあった男の死とともに、男のうそに次々と気づいていくことになる女たちの物語「煮こごり」。そして、幼いころに出て行った母が、山で共に暮らしていた男の元を娘が訪ねる「ベーコン」など、食事風景を中心にあぶり出された、人間を描いた物語が並ぶ。

 どの料理も印象的でおいしそうなのはもちろん、食べている時の雰囲気や視線の絡み方が濃厚。ベーコンの脂身から脂が滴りこげていくさまとか、温かいシチューのにおいが家全体を包みこむ満足感とか、なんかこうドキドキするような生々しさだ。

 人が何かをむさぼり食べる状態はものすごく本能的。人を「食べちゃう」にしろ、食事を共有するにしろ、そこにはただならぬ一体感が生まれる。

 (集英社 1400円+税)=竹下綾・筆